モデルケース
晋弘舎横山桃子さん(第2期地域イノベータープログラム参加)
人口3000人の離島の町で地域イノベータープログラムを受け入れ
小値賀町は、長崎県五島列島の北端にある17の島々からなる人口3000人の町です。もともとは鯨漁や遣唐使の寄港地として栄えた島でした。
また、小値賀町の島の一つである野崎島はかつては隠れキリシタンの島としても知られ、島内には1908年(明治41年)に建設された旧野首教会が今でも残っています。
しかし、そんな伝統ある野崎島も人口の減少の波には勝てず、2002年にはついに無人島になってしまいました。
離島であるという厳しい環境において、人々がより豊かに暮らし、自分の子供や孫たちの世代にも島を残していくためには地域資源を活用したビジネスで自立的な発展がなされることが必要であり、小値賀においてここ数年の観光振興の取り組みは非常に大きな役割を担っていますが、総合的観光サービスとして更なる発展をしていくことが求められていました。
さらには近年、43%の高齢化率と縮小する年間出生数、主産業である農漁業斜陽化などの問題を抱え、島の自立のために新しい持続可能な産業が求められていました。
これまで観光産業による仕事創出の持続可能な発展ために、島の観光まちづくり、コミュニティービジネスの拠点を担ってきた小値賀観光まちづくり公社。これまでの成果を島の農漁業産品をつかった加工品、物産品の開発、販売促進につなげていくための取り組みに対するサポートを担ってくれるパートナーであるとともに、自らの事業で自立していく力を身につけて、島に定住して、新たな仕事を創りだしてもらいたい。という思いを持って今回のプロジェクトがスタートしました。
仕事が無いなら自分でつくる。そして大好きな小値賀で暮らしたい。
そんなプロジェクトに参加したのは、当時23歳だった横山桃子さん。もともと小値賀出身の彼女は、岡山の大学に進学後、東京の会社で働いていました。いつかは地元で仕事をしたいと思いつつも、東京で働いている中ではなかなかきっかけをつかめない。そんな時、地域イノベータープログラムで募集していた地元小値賀町のプロジェクトを見つけ、参画を決めたのでした。
小値賀では東京のデザイン会社で培った力を活かし、ポストカードなど新たな商品を開発。
ただ地元にUターンするきっかけをつかんだだけでなく、地域イノベータープログラムに参加したことで 小値賀観光まちづくり公社の仕事で地元の新たな可能性に気づくことができた。といいます。
さらには同期のプログラム参加者との繋がりができ、地域で仕事をしていく支えとなった。彼ら彼女らとは今でも連絡を取り合うほど密度の濃い関係性となっている。
今は、家業の活版印刷を継ぎながら、観光客向けに活版印刷の体験プログラムなどをつくるなど島での新たな仕事づくりに挑戦しています。
もともと小値賀に帰って仕事をすることは決めていたので、参加するときに大きな不安はありませんでした。前の会社で学んだ企画の立て方などは、いま小値賀でやっている仕事に活かされている部分が多いと思います。
今は、小値賀観光まちづくり公社での仕事と、実家の活版印刷の仕事が半分ずつ。実家の活版印刷で新商品を開発しながら島でどのようにしたら新しい仕事、食べていくことができるのかを模索しています。
また、以前は仕事だけの生活でしたが、小値賀での仕事は、地域のイベントに出たりだとか、仕事以外にも自分の役割があります。地域で仕事をするには、地域に入っていかないといけないと思っているので、ただ仕事だけをやるだけでは生きていけないと思います。
私は出身者とはいえ、まだまだ小値賀のことを知れていない部分もあるので、もっと地域とつながって仕事をしていきたいと思っています。
地域イノベータープログラムを受け入れて感じた可能性
今回、地域イノベータープログラムを受け入れて感じたことを、受入企業の高砂樹史さんにうかがってみました。高砂さんご自身も小値賀にIターン者として移住し、現在の仕事に携わっています。そんな中で、今回横山さんが参画したことはどんな効果をもたらしたのでしょうか。
僕らは今まで、観光や物産などをやってきて、そろそろ島内で起業をする。
ということを実践していくステージだと思っていた。我々の組織はIターン者がすごく多い中、横山さんはUターン者なのでいろんな層に自分たちの事業を発信したり、理解を求めたりするということはすごく良かった。これまで自分たちでやってきた雇用促進目的の補助金はお金だけ出して、あとは実績をつくってくれ、というのが多かった。
今回のプログラムは、横山さんに対してきちんと週報や研修もあり、コーディネーターの方にも相談に乗ってもらったりと丁寧に対応してもらっているのが伝わってくる。
UIターンして仕事をつくるにしても、人間関係をつくったり、事業のマーケティングをしていくために少なくとも1~2年は必要になってくる。そのための助走期間としては今回のプログラムは良かった。
これからUターン、Iターンでも起業していって食える人が増えたらいいしそのための一つの道筋になっていってくといいと思いますね。